「介護感」を見せない、上質なバリアフリー家具
立ち座りを助ける家具は、暮らしの自由を支えるもの。けれど、機能を前面に出しすぎると、リビングだけが施設のような印象になってしまうことがあります。
大切なのは、身体を支える性能を曖昧にせず、素材・色・配線を住まいの景色へなじませることです。
まず「どの動作がつらいか」を分ける
腰を下ろす
座面が低すぎると身体が沈み、着座の最後に負担がかかります。座面高だけでなく、柔らかさと肘の位置も確認します。
立ち上がる
足を引ける空間、前方へ重心を移せる座面、握りやすい肘が重要です。リフト機能は動く速さも試します。
室内を移動する
椅子の電源コード、ラグの段差、チェストの扉が通路を妨げないかを、家具単体ではなく動線で見ます。
電動リクライニングチェアの美しい選び方
FIRST
見た目の前に、身体との相性を試す
深く座ったときに足裏が床へ届き、肘を置いて肩が上がらないかを確認します。立ち上がり補助を求めるなら、背もたれだけが倒れるタイプではなく、座面ごと前上方へ動く機能の有無を見ましょう。
- 操作が迷いにくいボタン数、表示の読みやすさ、リモコンの定位置を確認。停電時や故障時の戻し方も購入前に聞いておきます。
- 張地が暮らしに合う布は温かな印象、レザー調は拭き取りやすさが魅力です。滑りすぎ、蒸れ、縫い目への汚れ残りも実際に触れて確かめます。
- 足元が安定している動作中に本体がずれず、足台との間へ物を挟みにくい構造かを確認します。子どもやペットがいる家庭は特に注意します。
- 電源が通路へ出ない壁際に押し込みすぎず、可動範囲とコードの余裕を確保。配線カバーも床色に合わせると生活感を抑えられます。
- 搬入と将来の移動ができる本体重量、分割の可否、廊下・扉・エレベーター寸法を確認します。模様替えや退去時の扱いやすさも大切です。
手すり付きチェストは「収納」と「支持」を混同しない
普通の取っ手や天板を、手すり代わりにしない
家具の取っ手や天板は、体重を預ける用途を想定していない場合があります。立ち上がりを支えるなら、支持用途が明記され、想定荷重や固定方法を確認できる製品を選びます。置くだけの浅いチェストは、引っ張る力で転倒するおそれがあるため、壁下地に合った固定も必要です。
| 確認箇所 | 見るポイント | 景観になじませる工夫 |
|---|---|---|
| 握り部 | 太さ・滑りにくさ・角 | 木部と同系色にする |
| 本体 | 支持用途・安定性・固定 | 脚や金物を目立たせない |
| 引き出し | 軽い開閉・飛び出し防止 | 取っ手を横ラインにそろえる |
| 配置 | 立つ位置・通路幅 | 壁面家具の一部として置く |
「補助具を隠す」のではなく、素材をそろえる
チェア、チェスト、サイドテーブルを同じ木色や金属色でつなぐと、機能がばらばらに見えません。ネイビーやグレージュなど落ち着いた張地に、オーク系の木部を合わせれば、医療機器のような印象を和らげられます。
ただし、見た目のために必要な機能を省くのは本末転倒です。身体の状態や動作に不安がある場合は、ケアマネジャー、理学療法士・作業療法士、福祉用具の専門職などへ相談し、実際に使う人と一緒に試してください。
上質なバリアフリー空間は、補助機能を消すことではなく、安全性を確かめたうえで、色・素材・配線をインテリアへ整えることから生まれます。
椅子は身体との相性を試し、支持家具は用途と固定を確認する。その丁寧な選び方が、本人にも家族にも心地よいリビングをつくります。
